ニュータウンが好きなんです | ニュータウンの未来を本気で考えてみました

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『ニュータウン』を知っていますか?

『ニュータウン』と聞いてどんなところか、イメージできる人は少ないかもしれません。

ニュータウン|画像検索結果

Googleの画像検索結果はこんな感じ。
wikipediaには、

都市の過密化への対策として郊外に新たに建設された新しい市街地

という記述がありますが、その原義は広く、なかなか統一したイメージはありません。
検索をしてみると、国土交通省の資料が(全国のニュータウンリスト H26.3月)出てきますが、その数約2,000。
北海道から沖縄まで全国に存在しています。

ひとくちに言っても、団地型、戸建て型、孤立型、再開発型など、さまざまな種類があるニュータウン。
こちらの記事ではニュータウン生まれニュータウン育ちの筆者が、ニュータウンの特徴、魅力、課題ついて列挙し、そしてその未来について考えていきます。

筆者について

1984年生まれ。
長崎県出身。
4歳~18歳までを長崎市郊外のニュータウン『光風台』で過ごす。
18歳で東京大学工学部理科一類に入学。
25歳で東京大学工学部電気工学科を卒業。
都内在住、一児の父。
趣味はJリーグ観戦。

まず、ニュータウンとは?

僕の育ったニュータウン、『光風台』

光風台

こちらが、僕の育ったニュータウン、光風台(長崎県長崎市鳴見台1丁目および2丁目)です。

さきのニュータウンリストによると、開発期間は昭和53年~昭和58年。
計画戸数1,264、計画人口4,424人に対し、人口統計ラボによると、現在の戸数は1,406、人口は4,096人となっています。

航空写真からわかるとおり、見事に山の中。
付近の山に登って見下ろすと、山を切り開いて開発したことがよくわかります。
まあとにもかくにも、なにもないところです。

団地内には昔は駄菓子屋がありましたが、今はスーパーマーケット1件のみ。
歩いていこうと思う範囲にはコンビニもありません。
長崎の市街地までは車で約40分。

では、田舎らしい魅力にあふれているかというとそんなこともなく、開発宅地のため、きれいな自然がいっぱいというわけでもありません。
人とのつながりも、どちらかというと希薄です。
そんなところなので、同級生でココに住み続けている人もほとんどいないと思います。

ニュータウンの特徴

と、ここまでなんだかネガティブなことばかり言っているようですが、実は僕はこの『ニュータウン』という環境がとても好きです。
なぜ好きなのか…?ちょっとじっくり考えてみると、上にあげた条件とけっこう関係しているように思います。
好きな理由、ちょっと列挙してみます。

ニュータウンにもいろいろありますが、僕の育った光風台は、いわゆるバブル期の地方に典型的な、郊外型、戸建てタイプのニュータウンです。
このタイプのニュータウンの特徴を列挙すると、

  • 住宅が集中している
  • 碁盤の目のように区画整理がなされている
  • 中心市街地から、やや離れている
  • 開発地のため、基本的には移り住んできた人だけ
  • 住んでいる人の収入層の分散が小さめ
  • 物理的にやや閉鎖的な環境

まず1つめの項目は言わずもがな。

2つ目の要素については、さらに戸建ての似たような家が並んでいるため、初めて来た人は確実に迷います。

3つ目、ベッドタウンとしての開発が多いため、ドがつく田舎にはニュータウンはありません。

4つ目の要素はやや重要で、土着のしがらみにようなものがない代わりに、人間関係もやや希薄。
『田舎は人間関係がウェット』というイメージをもっている都会の人は意外に思うかもしれませんが、両隣が何をしている人か知らない、なんてことはよくあります。

5つ目は統計情報があるわけではないのですが、バブル期とはいえ2,000~3,000万クラスの家を買える層というのは、特に地方になると案外限られており、公務員や地域の主要産業で勤めている人が多くなります。医者や弁護士など地方のトップオブトップは、もっと市街地に近いところに住みますし、低収入層は公営住宅に住むことが多いため、特に地方/民間開発のニュータウンにはこの傾向が強いのではないでしょうか。

最後に、これも重要なポイントなのですが、なるべく効率的な開発を進めようとした結果、ニュータウンには国道、幹線道路などにつながる道が少なく、『入口』と『出口』のようになっているので、やや閉鎖的な環境です。たとえば僕の住んでいた光風台では、地図を見てもらえるとわかるのですが、国道につながる道は2つ。あともう1つは車がすれ違うことも難しい山道で、実質的な生活道路としてはその2つしか出口がありません。

では、なぜ好きなのか?

なんだかネガティブなことばかり書いている気もしますが、僕はこの『ニュータウン』という環境が大好きです。
その理由、なかなか言語化することも難しいのですが、ちょっと列挙してみました。

  • 家がけっこう広い
  • 小学校が近かった
  • 遊びを工夫する
  • 怖い思いをすることが少ない
  • 友達にあんまり余計な気を使わない
  • なんとなく守られている感じ

戸建ての団地なので家はまあまあ広く、自分の部屋もありました。当時は当たり前のように感じていましたが、今思うとけっこう恵まれている。

小学校が近いのも嬉しかったですね。通学路に特に何もないので、友達と色々話ながら帰っていました。

3つ目は、これは時代のせいもあるかもしれません。ゲーム=悪、みたいな価値観が強い時代だったので、外で遊ぶことがけっこう推奨されていたのですが、先述の通り何もない。娯楽は無いし、自然もない。なんとか工夫して公園の裏の空き地に秘密基地を作ったり、野球をしたり、団地の端の小さな川(?)に集まって水遊びをしたり。
何もない中で工夫して遊ぶ習慣が身についたように感じます。

4つ目。繁華街とは無縁な街です。変な大人も少ないというか、昼間はそもそもみんな働いているので誰も歩いておらず、怖い思いをすることが少なかったように思います。

5つ目。これってけっこう重要で、やはり経済状況や家族構成が近い家族の集まりなので、性格もどちらかというとおとなしいキャラの子が多く(もちろんその中でのグラデーションはありますが)、遊びも刺激的というよりはまったり、といった感じ。光風台の小学生は中学校にあがり、県営住宅などのある漁港近くの小学校の子供たちと同じ学校に通うようになると、なかなかのカルチャーショックを受けたりすることも。

最後、うまく分析できないのですが、ニュータウンの中にいる限りはなんとなく安全な場所、自由にリラックスしていられる場所、という感覚がありました。閉鎖性、縦のつながりの薄さ、自分の家庭状況、いろんな要素があるのだと思います。

全国のニュータウン人口を調べてみました

ざっくりとニュータウンの特徴を列挙してきましたが、ご察しの通り、バブル期までに開発されたニュータウンは人口減少や高齢化などの課題が山積みです。もともと便利ではないところに無理やり作ったのですから、当たり前なのかもしれません。でも、僕は大好きなニュータウンの未来を、なんとか明るいものにしたい、そこでニュータウンが抱える課題を明らかにするために、まず人口の現状を調べてみることにしました。

調べた方法

国土交通省のサイトからDLできる、『全国のニュータウンリスト』から、住所の特定できそうなものをピックアップ。
各都道府県から、計画人口の多いニュータウンを1~2つ選びました。

それから、『人口統計ラボ』を使って、現在の人口を集計しています。

集計したニュータウンの個数:64
計画人口合計:2,369,489

現在人口は、計画人口の約7割。多くは50%前後に。

計画人口合計:2,369,489

に対し、

実際の人口合計:1,686,895

となりました。

計画人口に対する実際の人口の割合は、71%でした。
最頻値は40%~60%のエリアで、29のニュータウンがあてはまりました。

つまり戸建てが並ぶニュータウンでは、2階はすべて空き部屋ということ。
実にもったいないですね。最近はやりのアイドルエコノミーではありませんが、ココに何かチャンスがありそうです。

興味深いニュータウン3選

ここまでかなり主観に偏った話をつらつらとしていきましたが、ニュータウンの抱える課題をなんとか解決したい!と思っている人は、もちろん僕だけではありません。東京都の多摩ニュータウン、千葉県の千葉ニュータウン、大阪府の泉北ニュータウンなどをはじめとして、多くの地域で様々な取り組みがなされてきています。ここではその中でも変わった特徴を持つニュータウンを3つ、取り上げてみたいと思います。

和歌山県 ふじと台

和歌山県は和歌山市、ふじと台のニュータウン。施行面積は155haで、全国のニュータウンの中では中規模クラスにあたる都市。国土交通省のデータによると1994年に開発が始まり終了(予定)は2017年(…お。けっこう最近ですね。)
豊かな自然と安心安全に非常に配慮された町並みのなかに、和歌山県内初のイオンモール、コミュニティバスや病院、保育園や幼稚園(しかも送迎つき)、小学校や中学校はもちろん和歌山大学までと、生活に必要な環境がバランス良く整い、和歌山市の中で人口増加率No.1を記録している地域です(和歌山市総務局ホームページ「町別世帯数及び人口」により)。

さてそんなふじと台の魅力で僕が最も伝えたいのは、コンパクトさや居心地の良さではありません。
ふじと台最大の魅力。それはなんと言っても、「ヨーロッパ」にはてしなく近づけようとしているところ。誰がなんと言おうとここはヨーロッパ、中世ドイツの古い町並み。そんな強めのいきづかいを感じさせる大胆な建築物が立ち並びます。

ちょっと、列挙してみます。
●ふじと台小学校
●ふじと台ビル エスタシオン
●パルテノン公園

●ふじと台小学校
2011年4月に開校になった小学校。和歌山県内で18年ぶりに新設された小学校だそうです。少子化で閉鎖に追い込まれている小学校が多いなか、小学校を建設してしまうというところから、ふじと台の本気度がうかがえます。
注目なのはなんと言ってもその外観。みてください!


・・・どこ?


一瞬、日本とは思えない光景ですよね。ヨーロッパと言われれば、ヨーロッパに見えてくる。

●ふじと台ビル エスタシオン


2012年平成24年9月 オープンの駅直結ビル。駅ビルは町のシンボルになっていることが多いので、ふじと台を印象付ける存在になっているのではないでしょうか。

●パルテノン公園



僕が一番熱をもって列挙したいのが、パルテノン公園。

パルテノン公園、パルテノン東公園、そして建設中のパルテノン公園… と街の至るところに登場する公園らしいです。

実は関東の多摩ニュータウンにも同名の「パルテノン公園」が存在し、同じく5本柱の神殿のシンボルに似たモニュメントが来園者を迎えてくれますが、多摩ニュータウンのものはソリッドで都会的なニュアンスをミックスし風景に溶け込ませているのに対し、ふじと台のパルテノン公園からは溶け込ませる、という意志は全く感じられず。いかにヨーロッパのエッセンスを現地化せずにそのまま取り入れるか、と言わんばかりの存在感が感じられ、一見の価値ありの公園です。

茨城県 筑波研究学園都市

隣のママも研究者?日本で最もSFっぽいニュータウン、筑波研究学園都市

筑波研究学園都市って?
筑波研究学園都市は、東京等の国の試験研究機関等を計画的に移転することにより東京の過密緩和を図るとともに、高水準の研究と教育を行うための拠点を形成することを目的に国家プロジェクトとして建設されました。
つくばからノーベル賞受賞者も生まれるなど、研究機関等の集積をいかした世界的な科学技術拠点都市としての実績を着実に積み重ね、現在では2万人を超える研究者を有する我が国最大のサイエンスシティとなっています。
引用:つくば市役所 公式サイト http://www.city.tsukuba.lg.jp/jigyosha/machinami/kenkyugakuen/1002135.html

コンセプトからして、他のニュータウンと一線を画するのが筑波研究学園都市。

“街全体でもそこかしこにロボット、サイエンスを感じるデザインがあふれていますが、
驚くべきは、筑波研究学園都市の道路には「ロボット実験区間」の文字があること。”
つくば駅の周辺は、日本初という「モビリティロボット実験特区」なのです。
現在の法律では公道の走行が認められていない「セグウェイ」などのロボットを自在に走らせられる街なのです。
その名のとおり、研究に携わる人々が家族で住んでいるので、隣のママもパパも研究者なんてことも。日本で一番、SFの近未来都市に近い町かもしれません。

神奈川県 はるひ野

「5本の樹」計画
“3本は鳥のために、2本は蝶のために”
(GOOD DESIGN賞受賞)]

自然に触れられる公園がたくさん


神奈川県にある「はるひ野」は、
近隣に、自然に触れられる公園が多い。
「多摩よこやまの道」につながる遊歩道が整備されており、ハイキングも楽しめる。

出展 http://www.town-haruhino.join-us.jp/presentation_season01.html

教育は徒近隣歩圏内に


「やればできる」精神を大切にする「バディスポーツ幼児園」や、
9年間の小中連携教育で豊かな人間形成を図る「市立はるひ野小中学校」が近隣徒歩圏に。
教育環境を重視するファミリーにうれしい魅力です。

出展(http://www.sekisuihouse.co.jp/bunjou/kanagawa/c-haruhino/location/index.html)

2004年開業の駅は、高齢者に優しいユニバーサルデザイン


小田急多摩線「はるひ野」駅は、2004(平成16)年に開業。
高齢者や障害者にも優しいユニバーサルデザインが徹底されています。
その一環として、各ホームにエスカレーターとエレベーターがあり、
下りホームには、車いすやオストメイト対応の個室トイレが配されています。

ニュータウンの航空写真は美しい

マジメな話も大切なのですが、ニュータウンについて色々と調べていくうちに、あることに気づきました。ニュータウンの航空写真はとても美しいということです。特に郊外型は美しい。まるでナスカの地上絵のようです。
共感してもらえるかどうかは甚だ疑問なのですが、どうしても知ってほしいので、特に美しいものだけをピックアップして、列挙してみることにします。

千葉県 あずみが丘ニュータウン


千葉リーヒルズの名前で呼ばれたあずみが丘ニュータウンは、その名に違わぬ美しく整理された街並みが魅力。整然と等間隔・等サイズで並ぶ住宅は圧巻。

三重県 つつじが丘


伊賀の山中、青蓮寺湖のほとりのニュータウン。その立地ゆえに急な坂が多いというハンディキャップをものともしない正確な区画整備が美しい都市。

埼玉県 ビッグヒルズ飯能


山間を縫うように作られたビッグヒルズはまさに自然の回廊都市。渓谷の最奥部に鎮座するキューピータマゴ工場では今日も休むことなくマヨネーズが生産されている。

和歌山県 ふじと台


和歌山大学を南方に配し、学園城郭都市を名乗るふじと台。紀伊水道を望む丘陵地帯を切り開いて作られた都市は今も拡張を続けているようだ。

栃木県 宇都宮テクノポリスセンター


ホンダエンジニアリングに隣接する形で整備されたニュータウン。あらゆるチェーン店にテクノの名前が入っているだけでなく、テクノ街道という幹線道路まである、まさにテクノな都市。

秋田県 御所野ニュータウン


秋田自動車道に隣接した秋田市の玄関口。周囲の田畑や山林とのコントラストが美しい都市。中央を通る旧街道との調和が味わいを感じさせる。

神奈川県 厚木ニューシティ森の里


四方を山林に囲まれた厚木ニューシティ。その環境ゆえに外界につながる幹線道路も限られ、都市としての独立性をより一層引き立てる。

岐阜県 桜が丘ハイツ


大石原の森林と愛岐カントリークラブの間の丘陵地の間に作られた都市。3つの区画に分けて開発された細長いフォルムが特徴。

北海道 札幌ニュータウンあいの里


石狩川と真勲別川の間。自然と調和する形で美しく整備された土地。南東にモエレ沼公園を配するなど公園の多さも魅力。

宮城県 泉パークタウン


緩やかな丘陵地形を活かした、中世の要塞を思わせる街並み。山頂からの眺めはいかばかりだろうか、想像を掻き立てる都市デザイン。

茨城県 竜ケ崎ニュータウン


中央の山林地帯を取り巻くように半月型に市街地・工業地帯が配置された街並みが美しい。

新潟県 長岡ニュータウン


長岡ニュータウン運動公園や国営越後丘陵公園に隣接するように作られた都市。それはそれとして鶏を横から見た姿にしか見えないのは筆者だけだろうか。

いかがでしたでしょうか。

ニュータウンの未来を本気で考えてみました

いろんな可能性が残されているとはいえ、様々な条件を考えると、やはり課題が多いと言わざるを得ないニュータウン。
実際に全国のニュータウンでは、高齢化や人口減少の波が押し寄せてきています。
筆者の住んでいた光風台の小学校も、1995年当時には1学年最大4クラスあったのが、1~2クラスに減りました。

  • 高齢化(世代構成の偏り)
  • 建物の老朽化
  • 交通の不便さ
  • 一次産業資源の少なさ

これらの問題を解決しつつ、ニュータウンがこれから発展していくには…?
さきにあげた特徴から考えてみました。

  • 適度な密集性
  • 適度な閉鎖性
  • 地価の安さ
  • 住環境の良さ

このあたりがニュータウンの特徴だと定義してみます。
するとどうでしょう、この特徴がぴったり当てはまる場所があるのです。

周囲を山々に囲まれ、整然と区画整理された住宅地。
アメリカ合衆国、カリフォルニア州、サンノゼ。

そう、シリコンバレーです。

これから新しい時代を作るのは、巨大な産業ではなく、特定の人の集まり、コミュニティだと言われています。例えば最近の例でいうと、ブロックチェーン技術の発展。これはある企業から生まれたものではなく、個人のアイデアと、それに共感する人々の集まりが生んだ、新しい時代のプラットフォームになりつつある技術です。

新しい働き方。起業家の集まる場所。
3Dプリンターを駆使したマイクロ工場。
産地に近いことを活かした6次産業化拠点。
あるいは、地域医療や地域看護の先進モデル。

高度経済成長とバブルが生み出したオーパーツ、ニュータウンは、ひょっとすると日本のシリコンバレーになれる可能性を秘めているかもしれない。

ニュータウン出身でニュータウンが大好きな私は、そんな風に思うのです。

2018/5/6 追記

実際に、全国のニュータウンを抱える自治体では、起業を支援する動きも始まっています。

泉北ニュータウン(大阪府堺市)の例

ニュータウンについて包括的に取り扱うサイトやサービスは無いようなので、これからも地道に調べて発表していくつもりです。